「中国人生活保護大量申請」問題について

コラム

2010年に大阪で起きた「中国人生活保護大量申請」問題について

未だにネット上では時折このニュースが掘り起こされ話題になっている。話題になるたびに現在起こっている事と思い込み拡散許せないとの感情が渦巻く。制度に欠陥があったのも確かだろうし、感情的な意見もわからなくもない。少し経緯を掘ってみようと思う。

 

厚労省の通知

昭和29年5月8日に厚生労働省から一つの通知が出ています。以下がそれ

少し長いのでリンクを張ります。

・生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について(◆昭和29年05月08日社発第382号)

少し長いので要約しました。

生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について

  1. 適用範囲
    • 生活保護法の対象は日本国民のみだが、当分の間、外国人にも準用して保護を行う。
    • 申請手続きは一般の国民とほぼ同様だが、外国人特有の確認手続きがある。
  2. 申請手続き
    • 申請には有効な在留カードまたは特別永住者証明書の提示が必要。
    • 申請内容を確認後、都道府県知事に報告。
    • 外国の公的機関や支援団体による援助が受けられないことを確認。
  3. 朝鮮人・台湾人の特例
    • 戦前から在留していた人々については、一般の外国人よりも簡素化した手続きで保護を行う。
  4. 支援内容
    • 生活保護の適用に準じた就労自立給付金、進学準備給付金の支給。
    • ただし、日本国民と異なり「権利としての保障」ではなく、行政の裁量で行われる。
  5. 教育の取り扱い
    • 義務教育相当の支援は受けられるが、特定の外国人向け教育の費用負担はしない。
  6. 不服申し立ての不可
    • 外国人の生活保護は法律上の権利ではなく行政措置であるため、保護が却下されても不服申し立てはできない。
  7. 入院・施設入所時の取り扱い
    • 住居地の定義が日本国民とは異なるため、施設入所時の責任者が異なることがある。

この通知は、日本国内での生活困窮外国人の救済措置を明確にしつつ、日本国民と同様の権利を保障するものではないことを強調している内容

 

事件の経緯

  1. 2010年(平成22年)5月、中国・福建省出身の残留日本人孤児の姉妹の親族とされる中国人48人が「老人の世話をする」という理由で来日(入国)
  2. 日本に入国直後に、大阪市の複数の区役所で「定住者」の在留資格で生活保護の受給を申請。
  3. 大阪市は48人のうち32人に対して生活保護の支給を決定し26人に保護費を支給
  4. 大量申請の発覚
  5. 大阪市は支給済みの26人に対して支給を打ち切る方針を表明
  6. 8月、過去にさかのぼり同様のケースがなかったかを調査
  7. 申請した48人全員が辞退 (31人が取り下げ済み・さらに17人も受給を辞退)
  8. 大阪市が入国管理局に対し、在留資格の再調査を要請する
  9. 入国管理局は全員の在留資格を「定住者」から「特定活動」へと変更した。

 

追い切れていない部分

  1. 姉妹の親族とされる中国人48人は全員が同じ親族なのかどうか?
  2. 特定活動へ変更後の足取り

 

問題点はどこにあったのか?

入管行政のずさんさ

上記の通知に加え、出入国管理及び難民認定法も関係する。

有効な在留カードを提示できるとは在留資格があります。という事であるが、ここでどんな在留資格に生活保護が認められるかに厳しい規定や裁量があります。

特に第5条に上陸を拒否できる者が規定されています。重要なのは3項

第5条三項 貧困者、放浪者等で生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者

これを入国拒否できます。拒否できるということは在留許可を出さない事が出来ることになります。

 

在留資格認定申請書を提出する際に、申請人の職業、日本での生活費を誰が賄うか、扶養者・身元保証人等を記載しなければなりませんが、これが新聞記事によると、扶養者の職業欄、身元保証人の職業欄に『生活保護』。扶養者欄に『区役所』と書かれたものもあった」という記事を見つけることが出来ます。

新聞記事のリンクを以下に

入国外国人、収入欄に生活保護 大阪市「入管審査ずさん」 - 日本経済新聞
入国直後に生活保護を申請する外国人が相次いだ問題で大阪市は26日、在留資格を申請した中国人ら外国人計29人が、来日後の収入見通しを記載する欄に「生活保護」などと書いていたにもかかわらず、大阪入国管理局が在留資格を認めていたことを明らかにした...

 

入管業務のずさんさが一つの原因になっているのが分かります。

 

大阪市の対応

 通知によって生活保護が準用されています。その為有効な在留カードを持つ者を拒否できません。しかし、出来ないなりに正しく運用しようとした経緯が見えます。

過去を調査したり、入管に再調査を要請していますので

 

疑念

申請取次制度というものをご存じでしょうか?

昭和62年に始まった制度で現在は行政書士と弁護士が業として申請の取次が出来ます。

基本的な形として在留資格の申請は本人申請が基本です。非常に申請方法が大変で日本語を理解できない状態では申請自体がままならないでしょう。

この事件の中国人がどのような形で申請したかは追いきれませんでしたが、書類の用意、又は取次があったとすれば本人に力添えした者の存在がうっすら見えます。

 

取次が本人ならば書類の用意、取次が業として行う者なら依頼者の陰に隠れてブローカーの存在がうかがえます。

2010年当時すでに日本の社会保障を利用しようと画策する勢力の存在があったとすれば穴だらけの制度を放置はできません。

現実問題として、業として行う者は書類やヒアリングの結果が適法ならば受けるしかないのが現状です。たとえ要件に不適合があってもそれを判断するのは行政だからです。

 

在留資格について整理

一体どんな資格が生活保護の対象となるのかを通知内容から見てみましょう。

通知内容の項目から

  1. 外国人
    ここは大きく括ります
  2. その外国人の中で永住者、定住者、永住者の配偶者等、日本人の配偶者等
    この立場になれる事から上記の者からは出入国管理及び難民認定法の5条3項の者は除かれる(経済的裏付けのない者は除かれる)
  3. 特別永住者(在日朝鮮人、在日韓国人、在日台湾人)
    戦時中から在留していた者(日本国籍は無い)
  4. 入管法上の難民

 

特別永住者とは

日本国籍を持たないまま、永住者と同等の権利を持つ外国人

特別永住者は、日本国籍を持たないまま、永住者と同等の権利を持つ外国人のことを指します。特別永住者証明書は、特別永住者に発行される身分証明書です。

経緯は複雑ですがウィキペディアに解説があります。

日本の降伏文書の調印日である1945年(昭和20年)9月2日以前から、引き続き日本内地に居住している平和条約国籍離脱者(朝鮮人及び台湾人)とその子孫を主に対象としているが、朝鮮・韓国系の特別永住者には、戦後の密航者も多く含まれる。

ウィキペディア 特別永住者

テーマからは逸れるが、この特別永住者はその子孫にも認められておりそれが既得権となっている節がある。またその既得権に、戦後のどさくさに紛れて不法入国した外国人が含まれている可能性が高くこのあたりも問題だと思っている。

そのあたりに抵抗しようと考えたのが通知の要約にある4~7の部分ではないかと感じる。

このあたりに国際的な難民の取り決めや人権、人道といった考えが関係し、厳格に適用しようとする側と既得権を利用しつくそうとする者のせめぎ合いがみられる。

 

現在は在留許可で国籍がはっきりしているが、(通名により通常の生活では知る由もないが)これをうやむやにするようなことがあってはならないと思っている。

 

厚労省の通知

社援保発0817第1号(2011年)

http://kobekoubora.life.coocan.jp/20110817tuuti.pdf

これ何故か厚労省のサイトに見当たりません。

支弁方法について、日本で生活するうえである程度の経済的な基盤があることを証明する資料の添付が義務付けられています。

 

社援発0704第4号(2012年・平成24年7月4日)

2012年7月9日からの新たな在留管理制度の導入に伴い、生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について整理し、改正したものです。

  1. 外国人は生活保護法の適用対象ではないが、当分の間、一般国民に準じた保護を実施する。
    • 申請には在留カードまたは特別永住者証明書の提示が必要。
    • 急迫した状況の場合は、手続き前に保護を実施することも可能。
  2. 保護の手続き
    • 保護を希望する外国人は申請書を提出し、在留資格を証明する書類を提示。
    • 保護の実施機関が申請内容を確認し、都道府県知事へ報告。
    • 知事は、申請者が母国の大使館等から支援を受けられないことを確認する。
  3. 朝鮮人・台湾人の特例
    • 終戦前から日本に在住し、かつて日本国籍を持っていたため、一般外国人より簡略化した手続きを適用。
  4. 運用指針(質疑応答)
    • 在留カード等を提示しない場合、申請を却下可能。
    • 外国人が集団で申請しても、適切な手続きを経ない場合は受理しない。
    • 外国人の保護は行政措置であり、法律上の権利ではないため、不服申し立てはできない。
    • 住居地と実際の居住地が異なる場合、在留カード等の住居地を基準に保護を実施。

この改正により、外国人の生活保護申請の手続きが明確化され、新たな在留管理制度に適合。

当面の間という表現に日本の悪しき習慣が出ているのがよくわかります。

運用方針により一定の強化を試みているのは分かりますね。

 

最高裁平成26年(2014年)7月18日判決

さてまことしやかに言われる外国人に生活保護支給は憲法違反!ですがどうでしょうか?

検討できる判例があります。こちらもなぜか判例検索に引っかかりません。

以下の判例研究に概要が記載されています。

判例研究

これを端的にまとめると

  1. 生活保護法上外国人は対象ではない
  2. だが、行政庁の通達に基づき事実上の保護の対象であるにすぎない
  3. 行わなくても違憲ではないと言ってるにすぎず、行うことが違憲であるかどうかには言及していない。

外国人に生活保護支給は違憲とされているわけではない

結果事実上の保護対象であることから支給が開始されている。

 

まとめ

ネットで言われている内容からすればイメージの違う感じになるのではないでしょうか?

桜井誠氏と大阪市役所がやり合ってる有名な動画があります。

これ見たらだれでも腹立つと思います。私もそう感じたものです。少し落ち着いて考えてみた方がよいでしょう。

 

外国人の生活保護問題一つとってもいくつかの類型に分かれるのが分かります。

  1. 違法外国人の居座りによる社会保障圧迫問題
  2. 難民とされる外国人の扱い
  3. 特別永住者の既得権化している優遇問題

 

サイト管理人はこう思っています。

違法外国人への対応はスピード。速やかに国外退去です。時間がたてば経つほど難しくなるのです。人道や、市民活動を巻き込みますから。

生活保護や社会保障は自国民の権利を守るために完全ガードするべきです。

 

また難民とされる人に対しても長期の援助は必要でしょうか?世界的にみても安全で、移動や職業の自由があります。

援助期間を決めた方がいち早い自立につながり人生を他人の暴力により犠牲にしてきた人には、早くいきいきと自分の人生を歩いてもらう方が人道的ではないかと考えています。援助をし続け黙って息だけしていれば済むような環境を提供することがやさしさでしょうか?

 

現実の問題として特別永住者の問題が最大だと思っています。

割合に応じて保護をするということが正しいかもしれません。イヤ分かりませんこの問題に解決策を私は持っていません。若しくは母国に対応を求めるか、、、

いずれにしろ時間がたてば経つほど難しくなり最早解決が出来ないほどの時間がたったかもしれません。解決するには非人道的だと罵られる覚悟が必要かもしれません。

 

インバウンド政策や外国人政策によりたくさんの外国籍の方がいらっしゃいます。それは良いのです。そこに優遇や違法に対しての恣意的な運用がよくないと言ってるにすぎません。

一定の割合で違法に手を染める者が出てきます。それは私たち日本人でも同じことです。その際違法に様々な社会資本が食われてしまうのを防がなければなりません。受け入れる前に基準、法律をきちんと決めましょう。その際は自国民を優先するべきであるという考えです。


ご覧いただきありがとうございました。

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